シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』を観てきた
シネマ歌舞伎『歌舞伎NEXT 阿弖流為〈アテルイ〉』を観てきました。
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「シネマ歌舞伎」は、歌舞伎の舞台公演を撮影し、その映像をもとに映画スクリーン向けの演出を施して上映するスタイルの作品です。新歌舞伎座や、四国の旧金比羅大芝居(金丸座)で歌舞伎に触れてから、歌舞伎が以外と面白いということに気づいたものの、本物の歌舞伎公演はmだちょっと敷居が高い。そんなわけでこのシネマ歌舞伎はずっと気になっていたんです。
一方で「歌舞伎NEXT」は、劇団新感線がてがけた現代風歌舞伎。古典歌舞伎の魅力を残しつつ、ストーリーや演出を現代風にアレンジしたという触れ込みで、こちらも歌舞伎初心者に優しそうです。だからと言って紛い物というわけではなく、演じるのは一流の歌舞伎役者の面々だし、特に主役は市川染五郎・中村勘九郎・中村七之助という新気鋭の3人です。
そして題材が『アテルイ』。映画のストーリー紹介にあるように、平安朝廷による蝦夷征討の際に、征夷大将軍・坂上田村麻呂と戦って大いに苦しめたという蝦夷の大将がアテルイです。このアテルイ、ねぶたの題材として極めて一般的なんです。
ねぶたの起源に関する古い伝説に、「田村麻呂率いる朝廷軍を、大灯籠を使って追い払った」というものがあります。この起源説は今は否定されていますが、現在の「ねぶた大賞」が以前は「田村麿」という名称であったくらい、田村麻呂と青森ねぶたとは強いつながりがあります。そのライバルであるアテルイがねぶたの題材としてよく使われるのも当然というわけです。
前置きが長くなりましたが、ここまで条件が揃ったら、これは観ないわけにはいかないでしょう。というわけで行ってきました。一言で言って、楽しかったです。
まず、殺陣シーンの迫力がすごい。もともと迫力のある歌舞伎の殺陣シーンを、いろいろな角度から至近距離で撮影しているので、臨場感がハンパないです。かと言って過剰に演出が加えられているわけでもなく、歌舞伎の魅了を引き出すことにフォーカスを当てているような感じです。
音響も同様に、本物の歌舞伎を観ているような感覚にさせる臨場感があってよかったです。私は歌舞伎の「ツケ」(見栄切りのときなんかに、舞台の袖で木をバンバンっと打ち鳴らしてるアレ)が大好きなのですが、これもそのまま効果音として忠実に使われていました。
一方でストーリーやセリフ回しは歌舞伎を知らない観客にも分かるようにアレンジされているので、本物の歌舞伎を観ているときのように、「今の何て言ったの?」みたいになることは無かったです。
本物の歌舞伎ファンからすれば物足りない部分もあるかもしれませんが、これはこれで、私のような初心者には十分楽しめるものでした。また本物の歌舞伎を観に行きたいという気にもさせられました。この阿弖流為も、舞台でも見てみたかったなあ。