【書評】『名人が語る・ねぶたに賭けた半世紀』(千葉作龍)

公開時期が前後してしまいますが、この記事は「青森ねぶた祭り Advent Calendar 2015」の12月8日分として書きました。書けなくて抜けてしまった日付について後追いで埋めようということです。

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今回は、5代目名人となったねぶた師・千葉作龍氏による『名人が語る・ねぶたに賭けた半世紀』を紹介します。

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現役のねぶた師が直接自分の手で生涯を綴った本というのはこれが初めてではないでしょうか。ねぶたの制作を生業とすることに対する苦悩や喜びなどが赤裸々に綴られており、普通であればあまり目にすることのないねぶた師の側面や内情を知ることができます。

また、本書には千葉氏自身のことのほかに、自身が交流のあったねぶた師のことや、父・千葉作太郎師から聞いた戦前のねぶたの様子などについても触れられています。『龍の夢』『龍の伝言』とは違う、ねぶた師本人の目から見たねぶたの世界が伝わってきます。

カラー写真が豊富なのもこの本の魅力です。千葉氏自身のねぶたやその制作風景のほかに、歴代を代表するねぶたの写真がふんだんに掲載されており、ねぶたファン必読の一冊になっています。

さて、千葉作龍名人のねぶたは個人的にもすごく好きです。北村兄弟のねぶたのような一瞬の華やかさには欠けるものの、大きい顔や太い手足による重厚感はほかのねぶたには無いもので、しっかりとした安定感を感じます。
その一方で、次々と新しい要素を取り入れていくチャレンジ精神にも満ちています。毎年見ていると、「今年はこのあたりを攻めてるな」という部分がわかってきます。この安定感と新規性の絶妙なバランスが、千葉作品は通好みだと言われる所以だと思います。