青森のねぶたと黒石の人形ねぷたの違い
この記事は「青森ねぶた祭り Advent Calendar 2015」の12月12日分として書きました。
以前のエントリー「"ねぶた"と"ねぷた"で何が違うか」で、黒石ねぷた祭りでは扇ねぷたと人形ねぷたの両方が出陣すると紹介しました。しかし、同じ人形ねぶたとはいっても、細かい部分の作りはちょっと違うんです。今日はその辺りを紹介します。
まず、最近の青森の大型ねぶたはこんな感じです。駅のポスターなどでよく見るのはこれですね。
電気が付いていない状態だとこんな感じです。
大きさが大きさなので迫力があるのに加えて、細かい部分に至るまで非常によく作り込まれていてます。この技巧の細かさは、最近の青森ねぶたの大きな特徴と言えると私は思っています。
流行に強く流されず、昭和の雰囲気を残していると言われるのは、千葉作龍名人のねぶたです。
線が太く、重厚感があります。
次に、黒石の人形ねぷたを見てみましょう。
違いが分かるでしょうか。この違いは相当目が肥えてないと分からないかもしれないと、書き始めてから思いました(笑)。テーマ選びを失敗したかも。
黒石の人形ねぷたの特徴は、人物や動物のダイナミックな動きにあると言えます。手足や体が捻れて、ありえないところから飛び出していたりします。真ん中の人の体の向きなど、もうどうなっているのかよく分かりません。
こちらは、左の人が相手の攻撃を避けながら、ひっくり返って棍でカウンターを仕掛けているような構図です。漫画のような動きです。青森ねぶたにもこのような構図のものはありますが、黒石の場合は、関節の動きなどが現実離れしており、ダイナミックさがより強調されています。
青森ねぶたと黒石ねぷたでは、墨使いにも違いがあります。さきほどのねぷたは、電気が付いていない状態だとこんな感じです。
受ける印象が少し違うと思います。何がどう違うのかは、私の知識と文章力ではうまく説明しきれないのでやめておきます。
また、黒石ねぷたは送り絵(背面)が平面の美人画です。表面のダイナミックな武者の動きに対して、物悲しさを感じさせる送り絵も魅力的です。
ところで、この黒石流の人形ねぷたが、青森の大型ねぶたとして出陣していた時期があります。黒石出身のねぶた師、村元芳遠さんが、に組・東芝のねぶたを制作していたからです。
次の写真は青森の大型ねぶたですが、黒石風です。冒頭の写真も、同様に青森に出陣した村元芳遠さんのねぶたです。
村元さんは、あえて青森風の作り方に寄せず、自分なりのねぶたを作るように意識していたそうです。黒石流のねぶたが青森ねぶたに出陣することにはいろいろと賛否の声があったようですが、個人的には村元さんのねぶたは大好きでした。ダイナミックな動きのほかに独特の不気味さがあり、今でも強く印象に残っています。